たつのの有名人&達人
トンボの達人 三木安貞さん(第2回)
<四国ではトンボを飼育>
四万十トンボ自然館
司会;他にも仲間はおられるのですか?
三木;四国の四万十市(旧中村市)に杉村君がいます。彼は、四万十トンボ自然館という施設を作りました。ここの兵庫県のトンボの標本はほとんど私が提供しました。
司会;そうですか。すごいですね。
三木;ここを作る時にここの理事にされましてね。よくここへ行っていました。今はトンボだけでなく、四万十川の魚なども育てているようです。
司会;ここは何かトンボに縁(ゆかり)があるのですか?
三木;彼は私と同じようにトンボに興味を持ち、自分が経営する喫茶店の2階に標本の展示場を作ったんです。場所的に狭くなったので、自分の趣味を活かしたいということからこれ(トンボ館)を考えたのです。初めはトンボの標本だけでしたが、その内に中村市(現在の四万十市)に協力してもらってトンボ公園にしたのです。
<龍野と言えば“赤とんぼ”でしょ?と言われますが・・・>
司会;私もいろいろたつの市の良さをPRしようということでホームページ等をやり始めました。観光マップの取材をいろいろやっている中で、こういうことがありました。
龍野の旅館の社長さんが京都のお客さんから電話で聞かれたそうです。”龍野って三木露風の赤とんぼで有名ですよね。”社長さんは”はい、そうですね”と答えられた後、そのお客さんは”でしたら、赤とんぼが見られるのでしょうね?”と言われ、社長さんは返事に困られたそうです。何故かと言いますと”ここへ行ったら「赤とんぼ」が確実に見られる”と言うことが出来ないということに気付かれたからです。社長さんは”龍野は赤とんぼの唄で有名だけど、トンボそのものをどうこうのというのは無いな”と思われたそうです。
私もその話をお聞きした時、”どこで見られるか?”を考えてみましたが思いつきませんでした。その話から”どうしたらトンボを飼育出来るんだろう?”と思い、いろいろ調べました。そうしたら先ほどお話しましたように”南の島から渡って来るとか、羽化したものは山の上に行ってしまう”とかの話を聞き、飼育してもどこかへ行ってしまうのなら、これは難しいことだなぁと思うようになりました。
”龍野は赤とんぼで有名”→”赤とんぼと言えば三木露風”→”三木露風と言えば赤とんぼ”というように、先ほどのお客さんの話じゃないですが、たつのへ行けば詩の原風景、つまり、露風の詩に唄われた赤とんぼが飛んでいる風景が見られるというようにしたいのですが、どうしたら良いでしょうか?
<飼育も可能?>
三木;飼育をするとなると、それなりに施設が必要です。
司会;(図鑑の写真を見せて頂いて)これは沼地みたいなものを作っている例ですね?
三木;そうです。四国や九州など色んなところにあります。
司会;これらはトンボ飼育用の池ですね。
飼育のノウハウはこれらの施設の方が持っておられるのですね。
三木;育てるにしても池の中に大きい魚がいるとダメですよ。
司会;どうしてですか?
三木;食べられてしまうからです。それから、周囲や底をコンクリートにしている池もダメです。コンクリートですと隠れる場所が無いですから。農業用水路も、昔は土のままでしたが、今はコンクリートで囲っているものが見られます。そういうところには全然おりませんね。
司会;確かにそうですね。エサは何が良いですか?
三木;幼虫の餌はミジンコやイトミミズとかです。大きいトンボ(銀ヤンマ等)のヤゴになるとメダカとか小鮒(こぶな)を捕ります。
司会;えーっ、小鮒も食べるんですか!それぐらいのエサがいないといけないのですね。
アキアカネに絞ればどういう方法が良いでしょうか?
三木;やはり池のような所で、ミジンコとかそういう小さな水生昆虫がいるようにしないといけないですね。鮒とかメダカはいても構いません。アキアカネはメダカも食べます。
司会;広さ的にはある程度広い場所が要りますか?
三木;いや、そう大きくなくても水槽で飼育することも可能ですし、広い水田でも構わないですよ。
司会;たつのでもトンボの飼育が出来たらなぁと思っています。
菖蒲谷(しょうぶだに)というところがあって、そこの休耕田を使わせてもらって飼育したら良いのでは、というアイデアもあります。菖蒲谷の上がちょうど野見宿禰(のみのすくね)神社で、そこの展望台のところに三木露風の詩の説明文の看板があります。丁度龍野の古い町並みや揖保川が見渡せる場所で、夕焼けの時に赤とんぼが飛ぶようになれば、いわゆる三木露風が見た原風景に近いのではないかと思います。
三木;聚遠亭(しゅうえんてい)にも池がありますね。
司会;あの池には鯉が沢山いますので、食べられてしまいますね。他に気をつけないといけないのは何かありますか?
<水質汚染に気をつけて!>
ビオトープトンボ自然公園
ベッコウトンボ
三木;気をつけないといけないのは、農薬等による水質汚染ですね。また、藻が多くてもダメです。酸素の取り込みが出来なくなったら困りますし。
司会;まず卵を捕ってこないと始まりませんね。
三木;やはり連結(交尾)を採取することから始めないといけません。
司会;はぁ。
三木;連結を離して水にお尻を浸けるとすぐに産卵します。羽根を持ってお尻を水にチョッ、チョッと浸けるのです。ぼくも宮崎で捕ったトンボを持って帰って産卵させて育てました。そのヤゴの抜け殻がほしかったんです。
司会;けれどもトンボが少なくなっていますから、連結のトンボを捕ってくるのは難しいでしょうね?
三木;何とか捕れるのではないかと思いますよ。捕り方もありますけど。
司会;どういう捕り方ですか?
三木;前から網を持っていってはいけません。逃げられてしまいます。目の前を通り過ぎてから後ろから網を持っていくと捕れます。
このベッコウトンボは、絶滅種の1つですが、四万十市の杉村氏は向うでだいぶん繁殖させました。
司会;へえ、すごいですね。そんなことまで出来るんですか!
三木;各地の学校などでビオトープ(人工的に生物群の棲息場所となるよう環境を整備した場所のこと)を作ってやられていますよ。
司会;ビオトープというのは初めて聞きました。
三木;神戸の御影にもあります。堺の関西電力にも作られていて、トンボも飼育しています。
司会;トンボを飼育するのは不可能ではないということですね?
そういう場所へお邪魔して、トンボのつがいを戴いてきて卵を産ませられたら良いですね。ズボラですが・・・。しかし、卵からヤゴになり、トンボとなった後、どこかへ飛んでいってしまいませんか?
三木;いったん飛んでいっても、大半はその水があった場所に帰ってきますよ。
司会;そうですか!どこかへ勝手に飛んで行ってしまうのでなく、戻ってくるのですか!それだったら(育てた苦労も)報われます。(笑)徒労に終わるということもない訳ですね。
一度やってみましょうか?まず休耕田をお借りしないといけないですね。
もし実際にトンボを飼育して山で飛んでいる姿が見られるようになれば、観光客の方も喜ばれるでしょう。
それから赤とんぼの詩の中に“桑”とい言葉が入っていますが、それは赤とんぼ荘のところにあります。詩の題材になったようなことが、実際に見られるようになったらなぁと思います。
最後に、トンボについての想いは何かありますか?
三木;トンボそのもののことではありませんが、最近は農薬も減りつつありますが、自然環境のことを考えた農業をやってほしいと思います。やはり、環境から色んなものが変わっていきますから。
司会;そうですね。自然に優しいということが最近よく言われますが、昆虫が生息しやすい環境が人間にとっても良いはずですからね。
今日はいろいろ興味深いお話をして頂き、どうもありがとうございました。もし、龍野で赤とんぼを飼育することになりましたらぜひご協力をお願い致します。
トンボの達人 三木安貞さん |1|2|
たつのの有名人&達人 メニューに戻る