たつのの唄を聴こう!
三木清の短歌と詩の曲CD化/橋本梅子(道の会)
「しんじつの〜小曲〜しんじつの」
作詞 三木清 / 作曲 下村正彦
歌詞(三木清) | 詩の内容 |
(歌) しんじつの 秋の日てれば せんねんに 心をこめて 歩まざらめや |
いかに生きるべきかの真理に達するごとく ひたすら、ひたすら、ひたすら 尚、我が魂を打込み険しくとも 歩んで(生きて)みせます。 (大学時代に詠んだ歌) |
(詩)小曲 あこがれ 出でゝ 野に来れば 草短くて 涙すに よしもなれど 遥かなる もの思うゆゑ 嘆かるゝ |
哲学を求めて、外国(ドイツ)に来たが 思うほどに学びは進まず、苦しくせつない だが、求める思いは変らず人世の為を 思えばこそ心が痛む |
君よと 呼びて 手をとりつ 春淺うして 歌うには |
愛する人に逢いたい! お互いの思いが解り合えるには まだむつかしい だが そうできたらと思うと 恋しくて たまらない |
あかつき光薄うして 故郷(さと)求れば 川に沿ひ 道ゆき行きて 還るまじ |
まだ哲学者としての道は
開けがたいが 如何に生きるべきかの 心を求めて 学びの道から離れないように 思案に明け暮れながらも 実るまでは逃げ出さない それまでは故郷にも帰らない |
三木清先生がご健在でおられたなら
「若者よ!夢があるだろう。
その夢に向うには、悩み、心が痛むだろう。
苦しいだろう、切ないだろう。
哲学者と讃えてもらう私も青年期には
この(歌)(詩)の如く心が痛み苦しんだ。
だが(しんじつの 秋の日てれば せんねんに
心をこめて 歩まざらめや)の
信念をもって生きて来た。
だが、若者よ!知ってほしい。
世相の中で生きたくとも生きられない人も居る事を!
人も自分の命も、計り知れない事を。
今、一度見据えてほしい!
若者よ!自分しか出来ない働きを発揮する時が
必ず来ると信じて今出来る事(小さな事でもいい)に
心込れをおしみなく前進していれば
自分が生れた意味が解る!」と、言って若者を育くまれたのではないでしょうか。
●苦しくても!
悲(哀)しくても!
寂しくても!
どんなに道が険しくても!
「如何に生きるべきか」を求め進む!と
三木清先生のご気迫を感じさせて頂くと共に魂が
打ち込まれているように思える。
無学な私達には言葉の意味は難しい・・・
ましてや三木清先生、お命懸けの心奥は
計りしれない事ではあるが、何としても若者に届けたかった。
―道の会― .
神戸新聞2008年8月20日掲載記事